すきまのはざま

2次元と3次元を行ったり来たり

推しの目に映るということ


2次元の推しはどこまでも私に優しい存在でした。

私が傷付いた時、癒しを求めている時、私の脳内では2次元彼氏が「君は何も悪くないよ」「頑張ってることを知っているよ」なんてド甘い台詞を吐いて慰めてくれたものです。客観的に振り返って文字に起こすとかなり気持ち悪いんですが2次元に恋する女オタクなんてほぼほぼ皆こんなもんだと思うんですよ。えっこんなもん…だよね…… ?


2次元の推しは推していてとても楽です。私の一方通行ですべては完結していて、私が想う限り私と彼は恋人同士だったから。彼が作られたキャラクターだから、物言わぬ架空の人物だから、気兼ねなく気持ち悪い感情を押し付けられる。私と同じように彼を好きな人を意識しなくても済む。だって彼が絵に描いた餅である限り、ファンの何人たりとも彼に影響を与えることなど出来ないから。

原作では普通の高校生だった彼を脳内で成長させて有名大学に進学させ夢へと日々前進するハイスペック彼氏にすることだって自由です。だって彼は2次元だからね。

振り返って言うと2次元彼氏の存在は寂しい時に使用する、己を慰めるための道具のようなものだったと思います。非常に非生産的で人間の生存本能に背いた存在というか…いや今も2次元オタクで2次元彼氏がいる身なので自分で書いておいてかなり苦しくはあるのですが。

こんなにも非生産的なのに現代社会において2次元彼氏、彼女に依存する人が多いのはやっぱり自分の感情の一方通行のみで関係が完結できて楽だからじゃないかな。恋愛ってまず面倒くさいししんどいですもんね。オタクっていう自分の趣味がある人は特にね。


そんな2次元オタクを小〜大学生になるまで続けていた私に不意に若手俳優の推しが出来ました。

私に3次元の推しが出来た、と気付いた当初はとても困りました。

なんせ物思う生身の人間を推したことの無い私ですから。

2次元の推しは私の脳内で美化された私を見ていてくれましたが3次元の推しはそうも行きません。接触イベでもあれば少しの時間でも私を見て、私と話して、何かを思う。相手は個の人間ですから私を見てどう思うかなんてこちらは知る由もありません。

この当たり前の事実に私は怖くなりました。もしお金を使って会いに行った時に、私を見て一瞬でも推しの顔にマイナスの感情が表れたらどうしよう。「うわ、ブスだな」なんて顔をされたらどうしよう。

幸い私の推し二人はどちらも接触の際ニコニコと笑顔でいてくれたので救われたのですが、初めての接触は本当に緊張しました。自意識過剰だと思われるでしょうが、いらない心配をしてしまうほど自分に自信が無いんです。


そこで、できるだけ己の精神の健康を守るため、それから推しの目に少しでも汚いものを映さないようにと整形を決意しました。もともと整形願望はありました。それを推しの存在が後押ししてくれた形になりましたが。


少し自分語りをさせてください。

(今までも自分語りだらけだろというつっこみはどうかしまっておいてください…)


私は子供の頃から周囲より少し発育が良くて、男性から性的な対象として見られることがありました。

地味でブスで大人しそうな外見だったこともあり痴漢だとかは割と遭いました。道を聞かれて立ち止まったらいきなり胸を揉まれたりだとか。

恋愛を楽しめる年齢になる前から男性に嫌な思いをさせられることが多く、男性というもの全てに良いイメージを抱けなくなりました。

「私は体だけしか価値の無い女なのか」という意識は今も私の中にあります。

そんなこともあって、脳内で完璧な2次元彼氏を作り出すようになっていったのだと思います。

今はもう男性に対して嫌悪感は無くなりましたが、初めてのデートで変に体に触れられたりホテルに誘われたりするとやっぱり落ち込みます。これももう少し大人になったら割り切れるようになるのだろうか。

心の深い部分に男性への復讐心みたいなものが燻っていて、自分の″レベル″を上げて見返してやりたい、という思いがずっとありました。

人の何を持って″レベル″が高いとするかは人それぞれでしょうが、目に見えて一番分かりやすいのはやはりその人の容姿、ルックスの良さだと思います。私は己の容姿を磨いて″レベル″を上げたいんです。私がこれから自立して一人で生きていくためにも。

3次元の推しが出来たことで、少しでも彼から良く思われたいという意識が芽生えて整形に前向きになることが出来ました。

今までの私は漠然とした男性という概念に対しての復讐として整形を捉えていて、マイナスの感情ゆえになかなか踏み切ることが出来ずにいました。

今はゼロからプラスへ向かおうとしています。そう思うように意識が向いています。

推し、いつも輝いていてくれてありがとう。


自分語りがえらい長くなりました。



美容整形、ましてや学生がお金を作るために水商売なんてと世間の方の多くは思うでしょうが、整形は私が今後自分の力だけで生きていくために必要なことで、水商売はそのための手段と捉えています。

大きなお金が必要だったので恐る恐る水商売に足を踏み入れましたが、お客さんやお店のお姉さん達は皆娘のように応援してくれますし、一応″女″を売る職なので自分磨きにも前向きになれて本当に恵まれた職場だと感じています。

ファミレスでいきなり怒鳴ってくるお客さんやコーヒーぶっかけてくるお客さんより千倍マシかな。


これからも推しに夢を与えてもらっている一介のオタク女として生きていきたいと思います。


推し、いつも素敵な時間をありがとう!今度の公演も楽しみです。